2020年10月04日 大阪→東京 キャノンボール 23時間37分

自転車を始めて以来、ずっと憧れの目標だったキャノンボール。

問答無用で国道1号で24時間切りできるほどの力を持っていないことは百も承知だが、「ルートと天候次第で達成できるかも」と思い、今年2月から入念に調査と準備を重ねた。

気温的に最も条件の良い秋の週末、風も後半は追い風予報、SR600や1000kmブルベを走って1週間のレストを挟んでフィジカルもこれ以上ない、逃す手はないと覚悟して出走。

走行中は「こんなツライのは二度とやらねえ!今回で終わらせる!」と全力で踏ん張り、23時間37分で完走。

時刻 地点 経過時間(h:mm) 距離(km)
2020年10月04日 04:44 大阪府大阪市 梅田 0:00 0.0
2020年10月04日 07:49 三重県伊賀市 ファミリーマート伊賀服部町店 3:04 68.5
2020年10月04日 10:51 愛知県弥富市 ファミリーマート弥富23号店 6:06 143.4
2020年10月04日 13:42 愛知県岡崎市 セブンイレブン岡崎本宿町店 8:57 199.8
2020年10月04日 17:00 静岡線袋井市 ファミリーマート袋井今井延久店 12:15 269.7
2020年10月04日 19:52 静岡県静岡市 セブンイレブン静岡丸子新田店 15:07 327.2
2020年10月04日 22:45 静岡県長泉町 セブンイレブン駿河南一色店 18:00 389.0
2020年10月05日 01:38 神奈川県伊勢原市 ファミリーマート伊勢原高森三丁目店 20:53 453.9
2020年10月05日 04:22 東京都中央区 日本橋 23:37 511.1

ルート選定

国道1号を走る基本の550kmルートは現在の脚力では無理なので、距離の短い初級ルートを模索。

結局、

  • 鈴鹿峠を通らず、清滝トンネルと国道25号(非名阪)を通る伊賀越ルート
  • 桑名から国道23号に入る
  • 潮見坂や浜松バイパスを通らず、豊川から国道362号を使って浜名湖北側を通る姫街道ルート
  • 箱根峠を通らず、御殿場から東京までは基本的に国道246号ルート(さらに駿河小山まではR246に並行する県道を使用)

という508kmのルートにした(実際には511km走行)。

要求されるグロス平均速度は約21km/h。

機材・ウェア

気温は21℃〜25℃程度の予報だったので、ほぼ夏用ウェアで挑んだ。

  • 自転車 (といっても1台しか所有していないが)
    • フレーム: SURLY Cross-Check (一応分類としてはシクロクロスだが、ほぼロードとして使っている)
    • コンポ: Shimano DURA-ACE R9100
    • クランクセット: 50x34 165mm
    • スプロケット: 11x32
    • タイヤ: Continental GP5000 TL 25C (フロントは7月にパンクしたときにクリンチャー化)
    • ホイール: Campagnolo Eurus
  • ウェア
    • ビオレーサージャージ
    • パールイズミ コールドシェイド ロングスリーブ
    • ミレー ドライナミックメッシュ
    • ビオレーサービブショーツ
    • スキンズ カーフタイツ
    • パールイズミ レーシンググローブ
    • 反射ベスト
    • 反射アンクルバンド
  • その他
    • サイコン: Garmin Edge 830
    • ライト: WUBEN C3 2本
    • サドルバッグ: レベレイトデザイン PIKA

その他の自転車の仕様は自転車についてに記載。

ボトルは2本体制で臨んだ。

補給はスポーツようかんとエネ餅をトップチューブバッグに詰め込み、1時間おきを目安に食べた。

出走まで

前日に新幹線で新大阪駅まで輪行。

新大阪駅前のホテルに宿泊したが、緊張のため一睡もできず。

本来は6時スタートを予定していたものの、眠れないまま午前3時30分を過ぎ、諦めて早めにスタートを決意。

ホテル前で輪行解除して梅田方面へ。

淀川を渡る橋やその後のルートが初見では難しく、ホテルは梅田近辺に取ったほうが良かったかも。

4時40分ごろに大阪市道路元標に到着。

Twitterにスタートのツイートをして、信号が変わるのを待って4時44分にスタート。

前半(梅田 - 袋井)

梅田をスタートして、信号機に捕まりつつ東へ。

花博通から国道1号の高架下にある側道と自転車道を使って国道163号に出る。

24時間後にゴールするように設定したバーチャルトレーナーにどんどん引き離されることを気にしつつ、そのまま国道163号で清滝トンネルへ。

事前に予習していたとおり、反対方向のトンネル歩道を経由して清滝トンネルを通過。

抜けた後は先をゆくバーチャルトレーナーを追いかけ、下りでも踏む。

西木津駅付近から抜け道を使って木津の市街地をバイパスし、木津川沿いに走り始めたところでバーチャルトレーナーに追いついた。

以降は順調に貯金を作り、三重県に入った伊賀市で最初の休憩。

休憩開始時点で貯金は10分。

休憩の仕方は何パターンか考えたが、コンビニに困らないルート特性を生かして、距離ではなく時間を基準に、具体的には3時間毎に休憩を取る戦略に。

その後、国道25号(非名阪)に。

以前はもっとダート区間が長かった記憶があるのだが、新しい舗装区間が増えていて、思ったよりもダート区間は短かった。

亀山で国道1号に復帰。

ここからパラパラと雨が少しだけ降っていたものの、南西の風に後押しされて順調に貯金を増やす。

桑名で国道1号から23号に移り、愛知県に入ったところで2回めの休憩。

貯金は40分近くまで増えていた。

国道23号は一部自転車走行不可の陸橋があるので、適宜歩道で迂回。

階段を押し歩くのは意外と筋肉にダメージがあり、右ふくらはぎと右太もも裏が攣りかけた。

以降はずっと攣りかけた筋肉を使わないようにして回した。

名古屋以降は今度は基本的に向かい風。

昼時で気温が上がり、信号も多いため貯金はほぼ増えず。

岡崎市の中心部を過ぎた、本宿で3回目の休憩。

距離を短くするため豊橋には行かず、豊川を経由して国道362号(姫街道)の本坂トンネルを通過。

トンネル通過後、三ヶ日方面を望む区間が、今回のルートで一番景観が良かった。

浜名湖の北側および浜松市街地を北回りで通過し、磐田・袋井付近で508kmのちょうど半分の254km地点に到達。

経過時間は11時間30分なので、貯金は30分のまま。

少しコンビニ間隔が空いていたので17時まで走り、ちょっと長めの休憩。

後半(袋井 - 日本橋)

相変わらず好調な胃腸により、トイレ休憩が長くなったため、貯金は10分を切ってしまったが、気温も下がってきて走りやすくなってきた。

秋の日は釣瓶落としとはよく言ったもので、あっというまに真っ暗に。

掛川バイパスの迂回として県道415号を通る予定だったのだが、いざ現地に行ってみると沢田IC北交差点に「自転車通行禁止」の看板が(下の画像はストリートビューから引用)。

一応、これは標識ではないので法的効力はないはずだが、完全に想定外で焦った(予習不足)。

少し戻って1本南の県道253号に迂回。5分程度ロス。

その後は小夜の中山トンネルを通過。

島田と藤枝では、それまでの掛川よりは信号に引っかからずに通過でき、新宇津ノ谷トンネルを越えて静岡市に入ったところで休憩。

真っ暗な静岡市中心部を通過して由比バイパスでは反対車線側の太平洋岸自転車道に行ってから由比駅手前で県道396号に。

蒲原を通過して、富士由比バイパスを通るべく、新富士川橋の歩道へ。

距離をかなり短くできるものの、狭くて暗くて長い歩道のため、かなり集中力を要した。

吉原駅を通過してしばらくは杉並木の道(ただし真っ暗)を東進し、途中から沼津バイパスへ。

共栄町交差点で左折して国道246号方面へ。

少し登って長泉町に入った所でコンビニに入って休憩。

休憩開始時点で貯金が20分で、再開時点では5分程度まで減少。

ただ、さすがに追いつかれてはいないはずなのに、Edge 830の画面にバーチャルトレーナーのアイコンが追いついてきた。

「貯金の計算を間違えた?」「いや、走りながら暗算してるから小数点以下を省略したとはいっても、さすがに追いつかれているわけがない」 とかなり焦る。

しかし御殿場までは登りのためバーチャルトレーナーにはどんどん差を詰められ、ついに抜かれた。

「こんなツライ思いは二度としたくない!」「絶対に今回で達成する!」 と意地で踏む。

しかし御殿場市街地を過ぎて下り始めた時、Edgeのルート表示がおかしいことに気づく。

次の曲がり角を案内せず、「終点 72km」などと表示するだけで、地図上でも一直線にルートが描画されている。

「これはおかしい」と思いながら走っていたら足柄駅付近で30mほど曲がり角を過ぎてしまったが、県道394号に出てしまえば後の道はナビ無しでも行ける。

駿河小山から国道246号に入り、下り坂 + 追い風により、ぐんぐん貯金を増やし、再び30分程度に。

心理的なプレッシャーから少し解放され、ふと思い返してみると、さっきからバーチャルトレーナーのペースがおかしかったのはコースナビゲーション機能が途中でバグっていたからだったと分かった。

松田、秦野を通過し、伊勢原に入ったところで最後の休憩。

最後の都心部では信号にかなり引っかかることが予想され、30分の貯金では安全圏とは言えないため、ゼリーだけ買ってすぐに再出発。

横浜市に入ったあたりで、路上に転がっていた何か黒い物体を踏んでしまい前輪がパンク

幸いスローパンクだったので、そのまま強行して続行。

ついに多摩川まで辿り着いた。

二子玉川の坂を登ったところで、さすがにフロントの空気圧が抜けすぎたため、一度停止して最低限の空気を入れて再開。

残り1時間で渋谷を通過。あと10km!

内堀通りに出た。あと少し!!

午前4時21分、ゴール!!!

月曜の午前4時なんか誰もいないだろうと思っていたけれど、同じショップでお世話になっているふぃりりん殿下(@ymp1032)ともう一人が出迎えてくれて嬉しさひとしお。

上の写真は殿下に撮影してもらった。

日本橋の日本道路元標の反対側でGarminをストップしてしまったため23時間36分になってしまっているけど、正しくは23時間37分。

ゴール後

8時30分から仕事が入っていたので、ふぃりりん殿下としばし談笑したのち、すぐに家に向かう。

午前5時頃に帰宅して、とりあえずシャワーを浴びて、腹が減っていたのでとにかく備蓄の食料を食べまくり、就寝。

大量のアラームを設定しておいてなんとか仕事に間に合った。

落ち着いたところでTwitterを見た所、沢山の人から応援や祝辞のコメントが来ていて、あらためて嬉しさがこみ上げたとともに、キャノンボールのコンテンツ力の高さに驚く。

振り返り

貯金時間の遷移をMathematicaでグラフ化してみたら、以下の図のようになった。

御殿場では少し危なかったものの、名古屋までに作った貯金をだいたい維持していた。

グラフで見てみるとちょっと休憩時間が長い気がするが、コンビニの店員さんの手際が良くなかったり、トイレで待たされたりと、この部分は少し運が悪かったと思う。

本当はもう少し休憩回数を減らしたかったが、気温が思ったより高かったため3時間もするとドリンクが尽きてしまっていたので、ボトルを増やさない限りは補給間隔を広げることができなかった。

また、通常はもっと後半にペースが落ちるものらしいけれど、ブルベでもあまりペースが落ちない私のようなタイプは少数派らしい。

その他、以下の点が反省点。

  • 前日に緊張のあまり一睡もできなかったのは今回最大の失敗。結局、走行中は眠気に襲われることは一度もなく、自分が睡眠に対して耐性が強く40時間程度連続稼働可能ということは分かったが、眠れたほうが良いのは間違いない。
  • Edge 830に本番ルートだけを入れたのも失敗。今回は道を知っているR246以降がバグっただけだったのでナビなしでも問題なかったが、予備として分割したルートも入れておくべきだった。

なお、達成時の私のFTPは215W、体重は58kgで、PWRは3.7W/kg。

キャノンボールは平地が多く、PWRよりもFTPの絶対値が重要と言われるが、もしかしたら達成者の中で215Wは最低値に近いかもしれない。

NPも125Wと、ばるさん(@barubaru24)のキャノボ達成に必要な出力 | 東京⇔大阪キャノンボール研究にある数値と比べてかなり低い。

それでも達成できたのはルート設定と天候、自分にあった休憩配分や補給だったと思われる。