RN1500の実際の明るさをスペックシートから見積もる
自転車用ライトとして一世を風靡したRN1500。
スペック上lowモード(300lm)で12.5時間のランタイムがウリなのだが、実際に300lmも出ていないのではないか、という話もあるため、電池とLEDのスペックシートから、明るさを見積もってみた。
前提
RN1500のスペック表のうち、
- LEDチップ: Luminus SST-40-W
- 電池: 21700 5000mAh
の2項目は信用して使用する。
300lm出ている可能性があるかどうか
まずはRN1500のスペック通りの300lmが出ている可能性があるかどうかを確かめる。
SST-40-WのスペックシートにTypical efficacy 170 lm/W at 700 mA
とあるので、RN1500のスペック通り、300lmを12.5h維持するためには
$$300_\mathrm{[lm]} / 170_\mathrm{[lm/W]} \times 12.5_\mathrm{[h]} = 22.1_\mathrm{[Wh]}$$
の電力量が必要となる。
一方、RN1500のバッテリ容量は5000mAhで、定格電圧は3.6Vであるため、電力量としては
$$5000_\mathrm{[mAh]} \times 3.6_\mathrm{[V]} = 18_\mathrm{[Wh]}$$
である。
後述のようにLEDは低温であるほど効率が良いので、10%ほど発光効率が良いとしても、それでもバッテリの容量が不足している。
従ってRN1500のスペック通りに300lmが出ていることは考えにくい。
実際のルーメン数の見積り
RN1500のlowモードの実ランタイムは13時間程度。 また、lowモードでは点灯後30分程度で照度が初期の57%まで低下する、という報告がある(参考1、参考2)。
従って、最初から照度減少後の明るさならば13.5時間のランタイムになる、と仮定して、電池の平均消費電力は
$$ 3.6_\mathrm{[V]} \times 5000_\mathrm{[mAh]} / 13.5_\mathrm{[h]} = 1.33_\mathrm{[W]}$$
DC/DCコンバータの変換ロスや制御用IC・電源ボタンのLEDへの電力供給などを除いて、バッテリ電力の85%をLEDに供給していると仮定すると、LEDの平均消費電力は
$$ 1.33_\mathrm{[W]} \times 0.85 = 1.13_\mathrm{[W]}$$
SST-40-Wのスペックシートにある、電流-電圧図から、消費電力が1.13Wになる場所を探すと、電流が0.43A、電圧が2.63V(下図)。
電流が0.43Aのときにの明るさは、同じくSST-40-Wのスペックシートから読み取って31%(下図)。
スペックシートのp.3にある、Flux Bin
は最も明るいP4
から最も暗いN2
まで記載されているが、
p.8にあるOrdering Part Numbers
にあるのはN3
とN4
だけ。
実際に製造されているなかで最も明るいのはN4
だと仮定すると、100%(1.5A)のときの明るさは594lmから634lm。
$$ 594_\mathrm{[lm]} \times 0.31 = 185_\mathrm{[lm]}$$ $$ 634_\mathrm{[lm]} \times 0.31 = 198_\mathrm{[lm]}$$
であるから、30分経過後の明るさは185〜198lmとなる。
ここまではLEDのスペックシートでの基準とされる環境温度が85℃のときの値で、周囲温度が低ければ明るくなる(下図)。
点灯中のRN1500に触れてもあまり熱く感じないので、LED基盤の温度を40℃程度まで冷却できていると仮定すると、明るさは+10%程度になる。
よって204〜217lm程度の明るさとなる。
結論
以上から、明るさ減少後のRN1500のlowモード(300lm)の実際の明るさは、変換効率85%、温度40℃を仮定した場合約210lmと見積もることができる。
また、以上の見積りはLEDを電流制御している場合の数値であり、パルス幅制御(PWM)している場合は異なる結果になる(とはいえ、今回の使用範囲で電流-電圧や電流-光束の関係が概ね線形なので、だいたい同じになると予想される。また大電流になるほど発光効率が落ちるため、PWMの場合はもう少し小さい数値になる)。
Dec. 26 2021 追記:
上記はLED単体のルーメン数であり、ミラーやレンズの損失があるため、ライトとしての全光束はこれより低くなる。 どの程度減少するのか見積もる資料が見当たらなかったので、今回の見積りでは考慮していない。
Mar. 26 2022 追記:
ついに積分球を使って全光束を実測した方が登場。参考3
だいたい200lm弱をキープしていたので、効率85%と仮定していた部分を、レンズやミラーの損失も含めて全部で80%とすることで整合しそう。
「LED以外の効率はだいたい80%」 というのは他のLEDライトを比較するときの基準にできる。